2011年8月17日水曜日

圓福院(五百羅漢堂) 鉄筋コンクリートと十一面観音【滋賀】

滋賀 圓福院


滋賀 圓福院 圓福院は滋賀県大津市の西、富士見台という琵琶湖を一望できる高台を登りきった頂上にひっそりと佇む天台宗の寺院。この日はあいにく雨が降り続き遠方まで見渡すことは出来なかったが晴れた日には遠くの三上山も望めるという。

富士見という地名はこの三上山、通称「近江富士」を望めることからついたのかもしれない。
それともはるか東の富士山を拝み見ることが出来たのだろうか。



圓福院
圓福院

車がすれ違うのも不可能なくらい細い道を登った先にある圓福院は地元の人から五百羅漢堂の名で呼ばれている。 創立開山ともに不明であるが、元禄12年(1699)僧空性により中興され延暦寺に属し光輝山と号した。

その時はまだ浜の方にあり、現在のこの富士見台へと移ったのは昭和35年夏のことである。 元の本尊は十一面観音で、現在は快慶作の釈迦如来坐像。本尊は建久8年(1197)10月の作で拝観には事前予約が必要だ。

圓福院に着くと、草が生い茂っており奥の庫裏へ行くと坊守の方にお堂を開けていただいた。



圓福院
圓福院 本堂

鉄筋コンクリート製の堂内には左右に羅漢が階段状にずらりと並ぶ。これだけ揃うとその像一躰一躰のもつ力強さを感じる。これは畏れという感情だろう。一躰だけでは出せない特別な何かがそこにあった。何かを必死に訴えかけているような空気感である。



圓福院
圓福院 五百羅漢

このずらりと並んだ五百羅漢は、室町時代の作もあれば昭和に入って造像されたものもある。
異なった時代の羅漢が集まっているのはその昔、明治時代に台風による影響でお堂が倒壊したときに五百羅漢も幾つか損傷したのだという。 昭和に入ると、檀家を持たない先々代の住職が宗務庁勤務の合間に一口五銭の月掛けで近隣を訪問し7年余りの浄財を受けて、壊れた仏像の修復また新しく造像をし今日に至っている。

檀家を持たない為にこのような地道な苦労を重ねてこられたのだが、壇の前の方に並ぶ彩色のよい像がその時代のものであろう。当時の住職の苦労が想像できる。

実際に何体あるのか数えたことはないらしいが、500躰を超えているのではないかとおっしゃっていた。



圓福院
圓福院 本尊釈迦如来坐像

本尊の快慶作の釈迦如来坐像は大津市の正法寺というお寺にあったものが寛正5年(1793)に還移したもので、像の高さは56.3cm(光背含まず)と小振りながらも衣紋の流れは刻みよく力のある目元をしている。普段はこの圓福院を訪れても厨子の扉が閉まったままであるが、事前に予約をすれば拝見させていただける。

膝裏に建久8年(1197)の銘と安阿弥陀という墨書があり快慶初期の造像であることがわかっている。安阿弥様といわれる優雅な表現は現れず引き締まった表情が全身の力強さを表している。



圓福院
圓福院 聖天堂

五百羅漢堂の参拝を終え、気になったことがあり坊守の方に訪ねてみた。

「元本尊の十一面観音様はどこにいらっしゃるのですか?」と。

すると、このお堂の隣にある聖天堂に聖天様と一緒に安置しているとのことだった。
隣の聖天堂の拝見をお願いすると快諾下さり、表の脇の扉からお堂の内陣へと入れていただいた。



圓福院
圓福院 元本尊十一面観音立像

予期せぬ出会いでこれほどの衝撃を受けることはなかなか無い。
この時の驚きは今でも鮮明に覚えている。小さな聖天堂の脇に設置された、冷たい鉄製ドアを引くと、目の前に飛び込んできたのは90cmほどの柔らかな顔立ちをされ黒く全身を染められたそれはそれは美しい観音様だった。


圓福院
圓福院 元本尊十一面観音立像




圓福院
圓福院 元本尊十一面観音立像

頭上に化仏を抱き、頂上仏は外れていた。衣紋のひだは動的で今にも歩き出しそうな雰囲気を持つ。

前垂れは風が下から吹き上げる様子を表しており、この像容から南北朝から江戸にかけての作であろうと思う。お顔は南北朝の頂上で衣紋は鎌倉にも思えるのだが、中興が元禄年間ということから南北朝から江戸時代にこの像が造像され、この寺院のご本尊だったのではないか。

文化財指定などはされていないのは、恐らくこのようにお堂の脇にひっそりと安置されているからに 違いない。すべての文化財を調査できないほどこの地域には文化財が多いというのが一番の理由だろう。時代が若いために指定をけていないというのもあるであろうが、何よりも滋賀という地が文化財の宝庫であることを肌で感じることが出来た。

本尊の快慶作釈迦如来像だけでなく、ぜひこの元本尊の十一面観音さまも合わせて拝見してほしい。
偶然の出会いが思いもよらない美仏との対面となった。






圓福院HP:ナシ
所在地:滋賀県大津市富士見台35-18

JR「石山」駅よりタクシーで約10分
バスの場合、石山駅より国道経由浜大津行き「滋賀病院」バス停下車徒歩5分
   
拝観時間:--(要予約)
拝観料:志納
その他詳細情報は仏像ワンダーランドHPへ>>




圓福院周辺地図

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参拝日:2011/07/07





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