京都での西国巡礼も、この日は残すところあと2ヶ寺。 観光客で賑わいをみせる清水寺から東大路通を南下し自転車でゆっくりのんびり20分。 異国な表情をした楊貴妃観音でも有名な泉涌寺に到着。この泉涌寺の塔頭の一つに西国33観音霊場第15番今熊野観音寺はある。 ※塔頭(たっちゅう)…寺院の敷地内にある子院のこと。禅宗で、大寺の高僧の死後、弟子がその徳を慕って墓の塔の頭(ほとり)に構えた寮舎。 | ||||
泉涌寺 総門 | ||||
泉涌寺は東大路通の「泉涌寺道」交差点を東へ入り緩い坂道を300mほど進むと、大きな総門へと達する。その奥に続く緑のトンネルに一歩入れば車の通りも騒音もない静寂に包まれる。 泉涌寺は真言宗泉涌寺派の総本山でもあり、鎌倉時代以降の歴代の天皇の陵墓をもった皇室ゆかりの御寺(みてら)である。 | ||||
泉涌寺 参道 | ||||
年中緑の生い茂る静かな参道は参拝者しか通ることのない澄んだ空気が辺りを覆う。なんども泉涌寺を訪れているがこの空気感は実に心地がいい。 今回は次の寺院への拝観時間が迫っており、参拝しなかったが、素晴らしい仏像や庭園をもつ塔頭が参道には数多く並んでいる。 | ||||
即成院 | ||||
泉涌寺の総門に入る左手には、 極楽浄土をその内陣空間に表した阿弥陀如来坐像と二十五菩薩像を安置する即成院。 | ||||
戒光寺 | ||||
総門を越え少し歩くと左手には、鎌倉時代の大仏師運慶とその子湛慶が作ったとされる光背を入れた総高10mの高さをもつ釈迦如来立像。 また、方角的には南に位置する泉涌寺のさらに奥には、見事な庭園を持つ雲龍院があり、飴色に艶の出た光背を持つ薬師三尊や走り大黒天を安置している。塔頭は他にもあり全てを回るならば丸一日かかるくらいの広大な敷地を持っている。 | ||||
今熊野観音寺 鳥居橋 | ||||
西国15番札所、今熊野観音寺も泉涌寺の塔頭の一つで、泉涌寺へと向かう参道を左に折れると緑の中に一際目を引く赤い橋が見える。 これが今熊野観音寺と泉涌寺の間の谷を流れる今熊野川を渡る鳥居橋で、これを過ぎると今熊野観音寺の境内となる。 | ||||
今熊野観音寺 | ||||
今熊野観音寺 本堂 | ||||
左手にコンクリート造りの大講堂をみながら緩い坂道の山道を登ると、本堂が現れる。 境内は泉涌寺塔頭の中でも最も広く、本堂の右奥には多宝塔が樹々の中から顔を出していた。 京都駅から泉涌寺境内までは歩いても30分ほどの距離。 近代化の進んだあの駅前から歩いて30分で、これだけの濃い緑に囲まれた寺院に着くのだから京都という町は不思議な土地だ。 | ||||
今熊野観音寺 本堂 | ||||
本尊は弘法大師空海作と伝えられている秘仏十一面観音像が、厨子の中に安置されており、 明るい堂内から同じ姿をされた御前立本尊が立たれている。 賑やかな京都の中心部から少し離れた観音寺は静寂に包まれた巡礼地に相応しい佇まいをしていた。 朝から亀岡の穴太寺、京都市内に入り革堂→六角堂→清水寺→今熊野観音寺と西国巡礼の札所を巡り時計は午後の三時を過ぎていた。 今熊野からコインパーキングに停めておいた三条まで自転車を走らし、車に乗り換えこの日の最後の目的地である山科の元慶寺を目指す。 元慶寺は西国33観音霊場の番外で、札所巡礼の中興の祖である花山法皇が落飾(出家)されたお寺。 清水寺でも有名な東山を越えた東側が山科であるが、その住宅街を一本北に入った大型車は通れない道幅の狭い道路の先にある。 | ||||
元慶寺 山門 | ||||
似たような造りの家が4~5件並ぶ道幅2mほどの細い路地を進むと、屋根に鯱を配した立派な楼門をもつ元慶寺に到着する。 鬱蒼と樹々が生い茂る5月、楼門をくぐると左には本堂、奥には庫裏の姿を確認することが出来た。 |
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元慶寺 本堂 | ||||
本尊は秘仏薬師如来坐像。本堂は閉めきっており、障子戸にはめ込んだガラス越しに中を拝見するが、 目視ではしっかりと確認することは出来ない。お寺の方に聞くところによると十二神将も安置されているとの事だ。 また、現在は京都国立博物館に寄託されているが、梵天と帝釈天は平安前期~中期の一木造で創建当時の像だという。 | ||||
元慶寺 境内 | ||||
境内の奥に庫裏があり、靴を脱ぎスリッパにはきかえて御朱印を頂き、ご住職と話をしていると観光寺院ではないために維持をしていくのはなかなか大変なのだとか。 それでも、綺麗に掃き清められた石畳と手入れされた木々たちには、往時の繁栄を思わせる美しさが残っていた。 今熊野観音寺HP:http://www.kannon.jp/ 所在地:京都府京都市東山区泉涌寺山内町32 阪急電鉄 四条河原町駅から、市バス207号系統(東向き)にて泉涌寺道下車、徒歩10分 JR・京阪電車東福寺駅より、徒歩15分 京都駅(JR・近鉄)より市バス208号系統(東向き)にて泉涌寺道下車、徒歩10分 京都駅より タクシー約5分 市バス利用の際は、循環バスのため運行方向に注意。 拝観時間:8:00~17:00 拝観料:志納 その他詳細情報は仏像ワンダーランドHPへ>>
大きな地図で見る 元慶寺HP:ナシ 所在地:京都府京都市山科区北花山河原町13 地下鉄東西線「御陵」駅下車徒歩約20分 JR「山科」駅下車徒歩約40分 京阪バス「北花山」バス停下車徒歩約5分 拝観時間:8:00~17:00 拝観料:志納 その他詳細情報は仏像ワンダーランドHPへ>>
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参拝日:2011/05/18 |
日本一のお寺好きが、日本全国の仏像やお寺、イベントなどの情報を分かりやすくご紹介します。主な掲載地域は奈良、京都、滋賀(湖北)、岐阜、愛知、三重が中心です。古刹、名刹、仏像に関しての拝観情報を紹介。西国三十三箇所巡礼、数珠巡礼も紹介します。
2011年6月14日火曜日
西国15番札所今熊野観音寺 京都駅から徒歩30分の静寂【京都】
今熊野観音寺、元慶寺
2011年6月5日日曜日
西国16番札所清水寺 清い水の地に建つ観音霊場【京都】
清水寺
穴太寺からスタートした西国巡礼もいよいよ中盤に入り、革堂から六角堂、そして清水寺へと向かった。 六角堂から清水寺へは自転車で約30分。 やはり京都で一番賑わう観光地ということもあり、小学生や中学生の修学旅行も重なりこの日も多くの人で賑わっていた。 | |||
清水寺仁王門 左には西門、奥に三重塔 | |||
清水寺は西国33観音霊場第16番の札所。 細かな説明をせずとも誰もが、おおよその事を知っている寺院というのは、 この清水寺と東大寺ぐらいであろう。 世界遺産にも登録された清水寺。その草創は奈良時代末期778年に延鎮という僧が開山し、 平安時代に入り間もない798年に後の征夷大将軍である坂上田村麻呂が仏殿を建立したのが 清水寺の始まりと伝えられている。 その後、興福寺系統の寺であったため比叡山との争いに度々巻き込まれ 諸堂の焼失を繰り返してきた。 現在の諸堂は寛永6年(1629年)9月10日の火災で全焼したものを寛永10年(1633年)、 徳川家光の寄進により再建されたものが多い。 | |||
清水寺清水の舞台から 写真中央が奥の院 | |||
境内に入ると本堂の前方には見晴台を兼ねた清水の舞台が現れる。 「清水の舞台から飛び込んだつもりで…」という言葉でも有名な大きな舞台。 急な崖の上にケヤキの柱を釘を一本も使わずに組み上げられた「懸造り(山や崖にもたせかけたり、 谷や川の上に突き出したりして建てること)」の舞台からは京都市内が一望できる。1200年前からこの舞台で多くの人が今日の街を一望したのだろう。 | |||
清水寺奥の坊から 右が清水の舞台と本堂 | |||
清水寺 懸け造り | |||
その舞台の北には本堂があり、外陣に上がり参拝することが可能。 内陣に入ることは出来ないが、秘仏で厨子に納められた千手観音像の左右の厨子には毘沙門天と 鎧を身にまとった珍しい地蔵菩薩が納められている。 それらを守るかのように二十八部衆と風神・雷神が薄暗い内陣に安置されているのが分かる。 本尊の千手観音は一般的に放射状に開かれた他の千手観音像とは異なり、 最も顔に近い左右の腕をまっすぐに頭上に伸ばし、化仏である如来坐像を両手で持つ「清水形観音」と呼ばれる姿。全国でもこの様相は少ない。 詳しくは清水寺HPを参照≫ (東海地方にお住まいであれば、岐阜の慈恩寺でこの姿を拝見することが出来る。 ご開帳は、1月1日~3日と8月9日、10日の午前中のみ) | |||
清水寺 阿弥陀堂 | |||
他にも清水寺には、本堂を出て眼前に建つ洛陽三十三所観音霊場第11番札所の奥の院や、 法然上人二十五霊跡第13番札所でもある阿弥陀堂など 国宝、重要文化財を含んだ15の伽藍が、音羽山中腹一帯の13万平方メートルという広大な敷地に点在している。 | |||
清水寺 音羽の滝 | |||
諸堂をひと通り周ると修学旅行生で賑わう音羽の滝が現れる。 三筋の清流が流れるこの滝は、六根清浄、所願成就を祈願するため1000年以上前から多くの人々に親しまれている。 | |||
清水寺 子安塔から本堂を眺める | |||
最も離れた位置にあるのが、子安の塔(現在修復工事中)であり、 奥の院から200メートルほど離れた丘の上に三重塔が建っている。 ここからは、本堂を正面に拝することができるので 時間に余裕があるならここまで足を伸ばしておきたいところ。 今までと明らかに違ったことは、海外からの旅行者がほとんど見受けられなかったということ。 私が知る清水寺は、季節を問わず海外からの旅行者が多くまるで人種のるつぼと化していた。 それが3月に起こった震災の影響で、外国人旅行者が減少している。 震災からまだ2ヶ月程なので慎重になっているのであろうが、 清水寺に日本人が多いというのは不思議なことであり、外国人旅行者の減少が 目に見えてわかる光景だった。 しかし、それでも京都一を誇る観光名所。修学旅行生だけでも清水寺へ向かう 清水坂は行きも帰りも多くの人で溢れていた。 清水坂を自転車で颯爽と下り、次の目的地「今熊野観音寺」を目指す。 HP:http://www.kiyomizudera.or.jp/index.html 所在地:京都府京都市東山区清水1-294 市バス「清水寺」「五条坂」下車徒歩15分 拝観時間:6:00~ 閉門時間は季節により変更するので、清水寺HPを確認すること。 拝観料:300円(夜間拝観時400円) その他詳細情報は仏像ワンダーランドHPへ>>
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参拝日:2011/05/18 |
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