2011年4月18日月曜日

賢林寺 町の誰もが拝見したことのない絶対秘仏のご開帳【愛知】

賢林寺

愛知県小牧市の賢林寺さんのご開帳へ行ってきました。
数年前から工事をされており、この度本堂と山門の新築を祈念してご本尊と脇侍がご開帳されることとなりました。

小牧市、岩倉市、北名古屋市のちょうど堺にある藤島町に位置する天台宗の寺院で、檀家さんのみでひっそりと建っているお寺さんです。

このお寺には平安期の珍しい十一面観音さまが安置されており、私も観音さまのお姿は写真でしか見たことがなく、今回のご開帳をずっと心待ちにしていました。

街の掲示板には、
"秘仏の為、今後100年以上拝観できませんのでぜひ御参りして下さい"
という張り紙がしてあり、この日に合わせ町の人達が沢山参拝に訪れていました。


賢林寺
賢林寺 山門


拝観時間は午後1時から午後3時の2時間のみ。
集まった町の人達が、それぞれに挨拶をかわしながら口々に言うのは
「観音さまをやっと拝見できる」という言葉。


賢林寺
賢林寺 本堂



檀家さんに話を聞くと、賢林寺は100年近くご開帳をしなかったそうです。この100年間一度もです。
ご本尊は平成18年に一度修理と県や市の文化財調査を兼ねて名古屋市博物館へ出展されたことがあり、その際に数人の檀家さんは拝見する機会があったそうですが、それはあくまで移動であり、多くの檀家さんやこの町の人達は一度も自分の町に安置されたご本尊さまを拝見したことがなかったのです。

今回お話を聞いたご高齢の檀家さんも、杖を持ちながらやっとこの日が来たととても嬉しそうに話してくれた。


賢林寺 薬師如来坐像
賢林寺 本堂内


新築されたばかりの本堂にあがると、外陣からおよそ4メートルほど奥に秘仏本尊である十一面観音坐像と、これまた秘仏である脇侍の十一面観音立像2躰を拝見することが出来た。


賢林寺 本尊右手の阿弥陀如来坐像
賢林寺 本尊十一面観音坐像


本尊の十一面観音坐像は平安時代前期の作で、一木造。高さは80センチと等身大の姿。奥行きがあり角張ったお顔や、厚く張った胸板などは平安時代前期の特徴であるが、角張ったお顔の中心に集まった目鼻口は宋風の顔をしている。ご開帳されてこなかった秘仏というだけあり金は剥がれているものの状態は非常に良く当時のままの姿をとどめている。

口元は固く結ばれ、厳しく前を見つめるその表情は神秘さに満ち、観音菩薩でありながら如来のような風格を持ち合わせている。坐像であるからそのように感じるのかとも思ったが、これは表情に現れているといってよかった。


賢林寺 本尊左手の阿弥陀如来坐像
賢林寺 三尊




賢林寺 本尊左手の阿弥陀如来坐像
賢林寺 本尊右手の十一面観音立像


本尊の右手には、ギュッと引き締まった腰を左にくねらせ、細く高い髻に大きめの頂上仏をもつ鎌倉期の漆箔十一面観音、左手には一木造の平安期の十一面観音となっている。

左の十一面観音さまは、長年修理されずにいたせいで状態が非常に悪く今回のご開帳に合わせ各所補修された。
過去の修理の際に金をはられていたこの観音さまは、もとは素地の状態ということが分かり補修と共に金も剥がされ本来の木目の美しい素地の観音さまへとお戻りになられた。

これだけの美仏が3躰も揃いながらお寺でのご開帳が今までなかったのはどうも不思議で仕方なかった。

開帳されなかった理由を檀家さんに聞いてみると、この賢林寺は一時期は檀家が一人もいない状況になるなど昔から檀家が少なくお寺の意向もありご開帳されなかったのだという。
そして今は檀家さんが約20名。外檀家さんも含めると100人ほどではあるそうだが、一般的なお寺から比べると20人というのは少ない。
今回のお堂の新築やご開帳の費用なども20人ほどの少ない檀家さんで負担し合ったそうだが、金銭面でかなり苦労されたらしい。

奈良や京都のような観光寺院でない限り、この檀家さんの減少というのはお寺の維持に関わる重大な問題であると改めて認識させられるが、この日集まった町の人達はみな自分の町に建つ観音さまがを初めて目の当たりに出来たことで賑やかな一日となっていた。

こうやって町の人達が集まりみな笑顔で挨拶を交わすという、素敵な時間が共有できるのだ。次回のご開帳は100年以上先とは言わず、近い将来、また観音さまと向き合える日が来ることを期待したい。


賢林寺 本尊左手の阿弥陀如来坐像
賢林寺 本尊




賢林寺 本尊左手の阿弥陀如来坐像
賢林寺 脇侍




賢林寺HP:ナシ
所在地:小牧市藤島町居屋敷267

名鉄犬山線「大山寺」駅下車、徒歩約16分
   
拝観時間:13:00~15:00(ご開帳時)
公開:秘仏(非公開)
拝観料:志納
その他詳細情報は仏像ワンダーランドHPへ>>




賢林寺周辺地図

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参拝日:2011/04/17





2011年4月17日日曜日

中墓寺 村で守り続けた3躰の平安仏【奈良】

中墓寺

私の住む愛知県から奈良県へ車で向かうときは、一般的に最短時間、最短距離をとると亀山から国道25号線、通称名阪国道を使い、天理方面へ入るルートとなる。

今回はそのルートを少し変更し伊賀上野から木津川沿いを走り笠置へというルートを取った。
このルートを使うと景色の良い山道を走ることになるのだが、笠置の山はいつも緑が濃く、木津川の水は澄んでおり勢い良く流れ、天気の良い時には絶好のドライブコースとなる。


木津川
木津川


笠置から山道を南下し下狭川という集落に今回の目的地である中墓寺に到着した。
笠置と同じくこの辺りも石仏で有名な地域だが、今回は収蔵庫に安置された仏像を拝見するために訪れた。

ここの地名でもある下狭川というのは、この地の領主の名で室町時代から戦国時代末期までその名を誇っていたという。

拝観の予約をお願いした午前9時。
正面に建つ庫裏へ行き、ご住職に挨拶を済ますと左手の瑠璃殿と名の掲げられたコンクリート造の収蔵庫へと案内していただいた。


中墓寺
中墓寺




中墓寺 薬師如来坐像
中墓寺 薬師如来坐像


収蔵庫には中央に薬師如来坐像、両脇に定印の阿弥陀如来坐像、上品下生の阿弥陀如来坐像が安置されており、3躰とも平安時代の作。薬師如来坐像の右手には、室町くらいの作であろうか、小さな薬師如来立像が安置されていた。

中央の薬師如来坐像は、かつてこの地にあった金剛院の本尊で宝暦年間(18c後半)に、この中墓寺にやってきたという。現在は薬師如来様が身につける納衣を除き肌となる箇所はすべて金泥を施されている。これは天台宗の薬師如来像によく見られる形で、着衣には朱で彩色し体部は漆箔といういわゆる朱衣金体の像である。
これは、修理に出す際に村の人達の希望で今のような金色の姿にしたそうだ。


中墓寺 本尊右手の阿弥陀如来坐像
中墓寺 本尊右手の阿弥陀如来坐像




中墓寺 本尊左手の阿弥陀如来坐像
中墓寺 本尊左手の阿弥陀如来坐像


左右の阿弥陀如来は顔や雰囲気が似ており同じ仏師もしくは仏師集団が彫ったものであろう。
衣紋の彫りはやや浅く、僅かに金の残るその顔は全体に丸みを帯び、親しみやすい素朴な顔立ち。

この地域はその昔、地形を利用し南明寺をはじめ数多くの山岳修行の寺院が建立されていたが、その後衰退し、戦火や廃仏毀釈により多くの寺院が廃寺へとなった。

住職にお話を聞くと、この狭川の村も他の地域同様、一時期全ての寺院が廃寺となり、そこに安置されていた仏たちをここへ集めて寺号をつけたのが中墓寺の始まりなのだという。

そして、これだけの立派な平安仏がこの地に多いのは、都が奈良から平安に移ると村人たちは奈良の中心部に出る必要がなくなり自らこの地に仏を掘り出し手を合わせたのだ説明していただいた。

確かに、笠置から登ってきても分かったが、これだけ深い山里の中に居を構えてしまえば、奈良の中心部へと行くのは容易なことではなく、この地にお堂が建てられ仏像が安置されたのも頷ける。

自分たちの村で大事にされていた仏像だけは守らなければならない。
そうゆうこの地の人々の強い思いや信仰心が、廃寺になった寺々の仏像をこの瑠璃殿に集めたのだろうか。

中墓寺へは、笠置寺や南明寺、浄瑠璃寺など南山城の寺院を拝見するコースを組むと充実した拝観コースとなるのでぜひ巡っていただきたい。

中墓寺 本尊左手の阿弥陀如来坐像
中墓寺 本尊左手の阿弥陀如来坐像




中墓寺HP:ナシ
所在地:奈良県奈良市下狭川町2060

JR関西本線「笠置」駅より33号線南進、約15分
   
拝観時間・休み:拝観の際は電話にて予約が必要(0742-95-0612)
拝観料:志納
その他詳細情報は仏像ワンダーランドHPへ>>




中墓寺周辺地図

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参拝日:2010/11/11





2011年4月13日水曜日

成願寺 近代的お堂に安置された名古屋市最古の十一面観音さま【愛知】

成願寺

桜が満開となった4月上旬。
名古屋市で最も古いとされる観音様を拝見しに名古屋市北区の成願寺さんを訪れた。

最後に掲載した地図で見てもらうと分かりやすいが、現在の成願寺は矢田川の南堤にあるが、もともとはその北に流れる庄内川の間に位置するお寺で、昭和8年に矢田川の改修に伴いこの地に移されたという。

創建は古く寺伝では天平17年(745年)といわれ、この地方の豪族である安食・山田両氏の菩提寺であった。




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成願寺


2009年に全面改築をされ、今はまるでコンサートホールのようなガラス張りの本堂となっている。
事前に拝観の予約をさせていただいたので、これまたモダンな直線的デザインの事務所へ行きご住職に挨拶を済ますと本堂へと案内してくれた。

一年ほど前にも観音様を拝見させていただいたのだが、その時はあいにくご住職は外出されていたようで、奥さんであろうか、お寺の方に開扉していただいた。


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成願寺 本堂


現在ではバリアフリーとなっており、本堂には床暖房を入れご本尊の安置されているお厨子の前には80脚ほどの小椅子が並ぶ。
これもやはり高齢化している檀家さんへの配慮ということで、昔の面影をすべて変えてしまうこの作りにはご住職自身も相当悩んだのだという。しかし、中興の祖であるこの地の豪族山田重忠による中興開山800年(平成21年)を記念し、現在の形へと変えたそうだ。

確かにお寺のあり方としては日本人が敏感に感じ、海外からの訪問者が憧れる侘び寂という情緒はないが、観光寺院ではなく、このような街中の檀家信徒さんを第一に考える寺院としては、この姿が正しいのかも知れないと思う。
変わらない姿ではなく、変えていくことも大事ではないだろうか。


そんなご住職のお話の後、これまたお堂の姿と同じく直線的なデザインで木の風合いを出した真新しい お厨子の扉を開けて頂いた。


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成願寺 十一面観音


成願寺の十一面観音さまは平安時代初期の仏像で、名古屋市の有形文化財に指定されている。
この地にこれ程までに古い仏像が安置されているのは、中世ではこの地が安食荘と呼ぶ荘園に属しており10世紀には京都の醍醐寺の荘園となったといわれ、その関係から都(京都)との交流があったのではないだろうか。


十一面観音さまは高さ164cmと等身大の高さで一木造。
正面の顔と同じく化仏には丸みがあり、宝冠や瓔珞は外されているが今でも大事に保管されているのだという。
裾の部分には翻波式衣文がみられる。


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成願寺 翻波式衣文


※翻波式衣文(ほんぱしきえもん):奈良時代末期~平安初期の彫法、波に似た小波(尖った線)と大波(丸い線)が 交互に表出した技法。



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成願寺 十一面観音


まっすぐこちらを向くその瞳は山号の名のとおり慈眼(じげん)の相をし、化仏や水瓶、台座などは後補であるが、衣紋や裳の所には花紋が描かれ彩色像であったことが分かる。光背は後補のものであろう、天台宗寺院によくある緑の円光背である。


庄内川と矢田川の間、輪中のような場所に位置し、度々の水害にもあいながらも観音さまはそっと優しく透き通った慈悲の目を私たちに向けている。
今のように堤防工事などの技術が乏しい当時は、多くの方がこの地でこの瞳と向き合い心を落ち着かせたに違いない。 慈悲の心と一言で言っても伝わるものではないが、この観音様の表情は慈悲の心を分かりやすく体現化している。

中興開山800年による大改築。お寺では今後、新たな試みを進めていくそうでその未来を楽しそうにお話しするご住職は観音さまと同じでとても優しい笑顔をしていた。





成願寺HP:ナシ
所在地:名古屋市北区成願寺2-3-28

電車:地下鉄名城線「黒川」駅下車、徒歩約30分
   
拝観時間・休み:拝観の際は電話にて予約することが望ましい(052-981-4530)
拝観料:志納
その他詳細情報は仏像ワンダーランドHPへ>>




成願寺周辺地図

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参拝日:2011/04/09





2011年4月10日日曜日

仏生会 花で彩る誕生日パーティー【奈良 法隆寺、興福寺、東大寺】

4月8日仏生会(法隆寺→興福寺→東大寺)

4月8日。
この日が何かご存知でしょうか。

12月25日がイエスキリストの誕生日であるように、この日はお釈迦様の誕生日なのです。

残念なことに、これだけ寺院の多い日本で4月8日がお釈迦様の誕生日というのは余り知られていないのですが、お寺さんではこの日に合わせて誕生をお祝いする行事が行われています。

今回は、昨年に引き続き奈良へお釈迦様のお誕生日をお祝いしてきましたので、その模様をお伝えします。


そもそも4月8日はお釈迦様の誕生日で、この日に行われる催しを「仏生会(ぶっしょうえ)」といいます。
お釈迦様は本名を(ゴーダマ・シッダルタ)といい、現在のネパールでルンビニで誕生しました。
お父さんは釈迦族の王スッドーダナ、お母さんはマーヤーといいます。

お釈迦様はマーヤー夫人の右の脇腹から生まれたと言われています。
そしてお釈迦様は生まれてすぐに自ら7歩歩き、右手で天を左手で地を指し「天上天下唯我独尊」と唱えられたとされています。
その時、天は光が満ち、空からは甘露の水がお釈迦様にそそがれました。

この時のお釈迦様誕生の模様を表したのが花会式で、釈迦誕生仏も天と地を指した姿をされています。
花会式の彩り方は各寺院で異なるのですが、花御堂という綺麗な色とりどりの花で飾られた小堂に釈迦誕生仏を潅仏盤と呼ぶ水盤上に安置し、甘露に見立てた甘茶(あまちゃ)を竹の柄杓で注ぎお釈迦様の恩徳をしのぶのがこの日の行事です。



私にはクリスマスと同じくらい心踊る行事でして、この日も法隆寺からスタートし、興福寺、東大寺と甘茶かけをしお釈迦様の誕生をお祈りしました。





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法隆寺


まず向かった先は、斑鳩の法隆寺。
聖徳太子が建立し世界最古の木造建築としても広く知られ、東大寺と同じく、奈良へ行ったことのある人なら誰もが一度は訪れた事のある寺院でしょう。

小雨降る法隆寺は桜が満開。
境内は修学旅行や遠足のシーズンも外れており、ひっそりと静まっていました。

花会式は五重塔や金堂が並ぶ回廊の東側、奈良時代の建造物で国宝でもある食堂(じきどう)で行われ、4月8日の仏生会の時のみ中に入ることが出来ます。


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法隆寺 食堂


食堂内の写真撮影は出来ませんでしたが、中では中央に高さ80cm程の薬師如来が安置されており、その前に釈迦誕生仏が安置されています。
誕生仏の前には、壺が2つ置かれており、その中には甘茶と聖水が入っていました。

花会式は潅仏盤と呼ばれる大きな椀の中央に立つ誕生仏に甘茶を注ぐのが一般的ですが、法隆寺の花会式はそれとは少し作法が異なり、小さなひしゃくで甘茶をそそいだあとに聖水をかけて洗い流すというスタイル。
これは他の寺院では珍しく、今回はじめて法隆寺の花会式で体験できました。


続いて向かった先は興福寺。
昨年は朝一番に興福寺に向かい花会式の法要に参加させていただきました。


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興福寺 2010年花会式法要の様子


今年も昨年と同様に平日にも関わらずお釈迦様の誕生日をお祝いすべく多くの人が甘茶かけをされてました。

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興福寺 花会式


興福寺の花御堂は、次に向かう東大寺と比べるとやや控えめの彩り。とは言え、寺院の中でこれほど綺麗に花々で装飾されたお堂は小さくとも人々の目をひきます。

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興福寺 釈迦誕生仏


そして、東大寺の仏生会は3時迄ということを耳に挟み急いで東大寺へ。
興福寺から東大寺は歩いても20分もかからない距離なので、仏生会に行かれる際は、ぜひこの二ヵ寺を一緒に参拝されることをおすすめします。

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東大寺 大仏殿


大仏殿への拝観券を購入し中に入ると参道のシンボルである大きな八角灯籠の向こうには既に長い列が出来ていました。

さすがは奈良でも一番の観光寺院である東大寺。
参拝される人の数は群を抜いています。


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東大寺 花会式


大仏さまに手を合わせた後、列に並ぶと時間はちょうど3時。
花御堂は生花で綺麗に飾られ、沢山の人々が笑顔で甘茶を注いぎ手を合わせておられました。

ちなみにこの日に安置される東大寺の釈迦誕生仏はレプリカで、本物は奈良国立博物館に陳列されている国宝です。
右手は肩よりも少し高い位置に上げ、左では手のひらを正面に向けた姿をされています。

この日東大寺で拝見した誕生仏は、レプリカとは言え多くの人に誕生日を祝ってもらい、にっこりと微笑んでいるかのような柔和な顔つき。人々が祈りや祝い事を向ける対象というのは、純粋な心の信仰でそこには国宝だとかレプリカという美術的価値は一切関係ないのだと改めて感じることが出来ました。


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東大寺 釈迦誕生仏


4月8日の仏生会。
私は奈良へ行きましたが、日本全国沢山の寺院で仏生会は開かれております。
年に一度のお釈迦様のお誕生日。

来年2012年は4月8日が日曜日ということもあり、今回参拝した奈良の各寺院も多くの人で賑わうことでしょう。



御祝いをする人たちの心が優しくなれる特別な一日---仏生会。
お寺の方と、参拝者でお祝いするお釈迦様の誕生日パーティーでした。






法隆寺HP:http://www.horyuji.or.jp/
所在地:奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺山内1-1

電車:JR「法隆寺」駅より徒歩20分、またはバス「法隆寺門前」行き「法隆寺門」前下車
   
拝観時間:8:00~17:00(2/22~11/3)、8:00~16:30(11/4~2/21)
拝観料:1000円(境内自由)
休み:ナシ





法隆寺周辺地図

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興福寺HP:http://www.kohfukuji.com/
所在地:奈良県奈良市登大路町48

電車:近鉄「奈良」駅より奈良交通市内循環系統に乗り5分、バス停「県庁前」下車すぐ    
拝観時間:9:00~17:00
拝観料:800円(国宝館・東金堂連帯共通券)、国宝館(600円)、東金堂(300円)
休み:ナシ





興福寺周辺地図

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東大寺HP:http://www.todaiji.or.jp/index.html
所在地:奈良県奈良市雑司町406-1

電車:JR・近鉄「奈良」駅から市内循環バス「大仏殿春日大社前」下車徒歩5分、または近鉄「奈良」駅から徒歩20分
   
拝観時間:8:00~16:30(11月~2月)、8:00~17:00(3月)、7:30~17:30(4月~9月)、7:30~17:00(10月)
拝観料:500円
休み:ナシ





東大寺周辺地図

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参拝日:2011/04/08





2011年4月6日水曜日

石馬寺 兵火を免れた平安仏の宝庫【滋賀】

石馬寺

西国三十三観音霊場で有名な観音正寺の北側、同じ繖山(きぬがさやま)の山裾に石馬寺はある。
山裾とはいえ駐車場から長く苔むした石段を10分ほど登った所にあるので容易とは言えない。


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石馬寺 石馬の池


その昔、聖徳太子がこの山麓に馬をつなぎ、山上まで自ら登りこの山の地形を観察し下山すると馬が、石と化してそばの沼に沈んでいた。その霊験をみて感動した聖徳太子が直ちに「御都繖山(ぎょとさんざん)」と名づけ寺を建立したのが石馬寺の始まりという。

今では通称「馬の寺」といわれている。
石馬寺へ登る石段の左下には、その時の沼であったと言われている小さな池が今でも残り、石馬の池と呼ばれるその池の中央には馬の背中であるという細長い石が置かれている。


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石馬寺 参道

この寺はもともと天台宗の大寺であったが、信長の兵火にあい伽藍や院坊は焼失。
今では手積みの石段の左右に穴太衆が組んだと言われる石垣と平地だけが残っている。

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石馬寺 参道


今ではひっそりと佇む古刹であるが、その石垣と石段を見ると戦国の時代には僧兵もいたのかも知れない。
ちなみにその兵火から数年後の、天正4年(1576年)に信長が築城を開始した安土城は、この石馬寺から車で数分の距離である。

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石馬寺 宝物殿


苔むした風情のある石段を登ると右には庫裏、正面に宝物庫、左に大方丈が建つ。
庫裏で拝見の受付を済まし、宝物殿に入るとすぐ目の前に丈六の阿弥陀坐像がいる。
2000年に造立された宝物殿は掃除が行き届いており、阿弥陀像以外にも十一面観音、大威徳明王など平安期の優れた仏像を間近で拝見することが出来る。

どの諸仏も国の重要文化財指定を受けており、保存状態は良く修理も行き届いており往時の隆盛をしのばせるものがある。

高さ2mの増長天と持国天が左右一番端に置かれ、その内隣にやや小さく160cm前後の広目天と増長天。
中心の阿弥陀観音を挟むように十一面観音が2躰安置されている。
今では殆どわからないが四天王はどれも彩色仕上げとなっている。

二躰の十一面観音は高さ179.7cmと167.8cm、柔和な表情で肉厚さがあり、この宝物殿の中で優しくそっと微笑んでいる。

宝物殿の中でひと際異彩を放っているのが、今にも立ち上がろうとする水牛の背に乗った大威徳明王。
騎乗する牛は寄木造で、明王は三面六臂(顔が三つ、腕が六本)の憤怒の相。脚は六本で、水牛の背に乗る左の一番前の脚をあぐらをかくように牛の背中に乗せている。
明王の二手は胸の前で小指と薬指を内側に入れ、絡ませ中指を立てて合掌する檀荼印を結び、他の四手には鉾や宝棒を握る。

騎乗する水牛の筋肉の表現や明王の姿は迫力を出しながらも藤原期特有の落ち着いた雰囲気となっている。


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石馬寺 大方丈


大方丈には本尊である鎌倉時代の十一面観音立像が安置されているが、こちらは現在秘仏となっている。

繖山の麓は古寺が多いことで知られているが、石馬寺はその中でも特に素晴らしく、この地域へ参拝に訪れる際は、是非とも拝観ルートに入れていただきたい。



石馬寺HP:http://www.eonet.ne.jp/~ishibaji/index.html
所在地:滋賀県東近江市五個荘石馬寺町823

電車:JR「能登川」駅より近江バス八日市行き「石馬寺」下車 徒歩15分
   
拝観時間:9:00~16:00
拝観料:境内自由(宝物庫:500円)
休み:月曜日(ただし予約すれば拝観可能)
その他詳細情報は仏像ワンダーランドHPへ>>




石馬寺周辺地図

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参拝日:2011/03/31





2011年4月3日日曜日

冷泉寺 独特の広がりをもつ"生える"千手観音【滋賀】

冷泉寺


蒲生の石塔寺、野洲の蓮長寺と湖南方面を巡り、
次に向かったのが千手観音を安置する近江八幡の冷泉寺。

観光寺院とは違うため、拝観の予約が必要である。
石塔寺から蓮長寺へ向かう際、右手に福寿寺というこれまた十一面観音を安置した黄檗宗の寺院があるのだが、冷泉寺はそこから数百メートルしか離れていない。

蓮長寺の十一面観音を拝見した後、昼食をすまし冷泉寺に向かった。
近江八幡の市街地から国道8号線へ向かい「六枚橋」という交差点を過ぎた左手に冷泉寺はある。
この地域では唯一の曹洞宗の寺院だという。


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冷泉寺


山門は古いものであろうが観音様の安置されているお堂は近年立て替えたようで、一見、本堂とは思えないコンクリート造の建物に変わっていた。

この地名である「千僧供(せんぞく)」の由来は、その昔、寛平年間(889~897年)に冷泉寺の前身である「曼荼羅坊」が清和天皇より、病魔に苦しむ人々の国のため、千人の僧侶を集めて病魔退散の起塔供養をしたことに縁を発し、「千僧供養村」と呼ばれ鎮護国家の勅願所となった。

その曼荼羅坊は現在の姿からは想像がつかないが、七堂伽藍を備えた巨刹だったという。

現在は本尊の十一面千手観音しか拝見できないが、他にも博物館などに行ってらっしゃる国の重文の薬師如来坐像、地蔵菩薩立像、四天王像の計7躰がこの曼荼羅坊の尊像だったという。


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冷泉寺 堂内


事前に電話したときにはご住職から当日は不在にしているがお堂は開けておくから庫裏に来てくれればいいと言われていたので、さっそく本堂左の庫裏で名を告げると、奥さんであろうか優しいご婦人がお堂に通してくれた。

お堂の中は畳敷きで20畳ほどの空間、5年ほど前にお堂の建て替えをしたそうで、柱も天蓋も綺麗に掃除が行き届いている。
「どうぞ須弥壇の前まで」ということで間近で写真を撮らせていただいた。


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冷泉寺 千手観音


彫りのはっきりとした平安仏で顔は厳しくも口元をしっかりと結んだ実直さが伝わる表情。
そして何よりも千手の表情が印象的で厨子の中いっぱいに拡がる姿に圧倒される。

湖北の黒田観音寺の伝千手観音にも似た雰囲気で、木の根のように手が力強く空間に拡がる。
高さ107cmとは決して大きくはないが、お厨子の中にいるからか手の広がりが広大な宇宙を想像させる。


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冷泉寺 千手観音


違和感すら感じる独特な千手は、肩や腕から"生えている"といった表現がふさわしいのかも知れない。
病魔退散の為に衆中を救うために日本の手では足りずに幾本もの手を伸ばす観音菩の姿。

悪病からこの地を救うべく、このような特異な姿に変化されたのではないかと思えた。



冷泉寺HP:http://reisenji.ishimago.com/index.php
所在地:滋賀県近江八幡市千僧供町252

電車:JR琵琶湖線「近江八幡」駅下車、バスで10分「長福寺」下車、徒歩約5分
   
拝観時間:不明
拝観料:志納
休み:ナシ
その他詳細情報は仏像ワンダーランドHPへ>>




冷泉寺周辺地図

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参拝日:2011/03/31





2011年4月1日金曜日

蓮長寺(比留田観音堂) 集落一の美女か空想の美人か【滋賀】

蓮長寺(比留田観音堂)

琵琶湖の南、野洲にある蓮長寺は琵琶湖から直線距離で
3キロも離れていないであろうのどかな土地に建つ。

この寺に安置されている十一面観音に一度でいいから会いたいと思っていた。
写真でしか拝見したことがなかったがその写真ですら心奪われる美しさだった。

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蓮長寺 本堂


事前に電話で拝観の予約をし、時間通りに現地に着くと本堂の左手に収蔵庫がある。
さっそく住職が収蔵庫の分厚い扉を開けてくださった。

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蓮長寺 収蔵庫


収蔵庫に入ると、その妖艶な姿に言葉も出なかった。
本物のほうが遥かに美しい。

檜の一木から彫り出された平安期の十一面観音は、内刳りがなく
高さ166cmと日本人らしい背の高さ。

頂上仏は欠損しているものの化仏は大きく髻とのバランスが良い。
もともと頂上仏がなかったのではないかと感じされるくらい違和感はなかった。
貞観らしく鼻筋のスッと通った異国の表情で、顎を引き優しい目をしている。

胸板は膨らんでおり、乳房のような柔らかな曲線が感じられる。
踊りでも踊っているかのような左上に強く持ち上げた腰は、ダンスのようだ。


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蓮長寺 十一面観音


刀の通りが気持よく衣紋の彫りもハッキリしており、
その姿は渡岸寺の十一面観音に雰囲気が似ている。

この集落一の美女がモデルだったのか、それとも空想の美女を彫ったのか。
今では分からないが男女の区別のない観音の中でこれほどまでに女性的な姿をした
十一面観音に出会ったことはない。

この十一面観音との出会いは一生の思い出となるはずだ。




蓮長寺(比留田観音堂)HP:ナシ
所在地:滋賀県野洲市比留田934

電車:JR琵琶湖線「野洲」駅下車 バスで15分「さざなみホール前」下車徒歩約10分
   
拝観時間:9:00から17:00
拝観料:志納
休み:ナシ
その他詳細情報は仏像ワンダーランドHPへ>>




蓮長寺(比留田観音堂)周辺地図

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参拝日:2011/03/31