2011年4月6日水曜日

石馬寺 兵火を免れた平安仏の宝庫【滋賀】

石馬寺

西国三十三観音霊場で有名な観音正寺の北側、同じ繖山(きぬがさやま)の山裾に石馬寺はある。
山裾とはいえ駐車場から長く苔むした石段を10分ほど登った所にあるので容易とは言えない。


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石馬寺 石馬の池


その昔、聖徳太子がこの山麓に馬をつなぎ、山上まで自ら登りこの山の地形を観察し下山すると馬が、石と化してそばの沼に沈んでいた。その霊験をみて感動した聖徳太子が直ちに「御都繖山(ぎょとさんざん)」と名づけ寺を建立したのが石馬寺の始まりという。

今では通称「馬の寺」といわれている。
石馬寺へ登る石段の左下には、その時の沼であったと言われている小さな池が今でも残り、石馬の池と呼ばれるその池の中央には馬の背中であるという細長い石が置かれている。


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石馬寺 参道

この寺はもともと天台宗の大寺であったが、信長の兵火にあい伽藍や院坊は焼失。
今では手積みの石段の左右に穴太衆が組んだと言われる石垣と平地だけが残っている。

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石馬寺 参道


今ではひっそりと佇む古刹であるが、その石垣と石段を見ると戦国の時代には僧兵もいたのかも知れない。
ちなみにその兵火から数年後の、天正4年(1576年)に信長が築城を開始した安土城は、この石馬寺から車で数分の距離である。

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石馬寺 宝物殿


苔むした風情のある石段を登ると右には庫裏、正面に宝物庫、左に大方丈が建つ。
庫裏で拝見の受付を済まし、宝物殿に入るとすぐ目の前に丈六の阿弥陀坐像がいる。
2000年に造立された宝物殿は掃除が行き届いており、阿弥陀像以外にも十一面観音、大威徳明王など平安期の優れた仏像を間近で拝見することが出来る。

どの諸仏も国の重要文化財指定を受けており、保存状態は良く修理も行き届いており往時の隆盛をしのばせるものがある。

高さ2mの増長天と持国天が左右一番端に置かれ、その内隣にやや小さく160cm前後の広目天と増長天。
中心の阿弥陀観音を挟むように十一面観音が2躰安置されている。
今では殆どわからないが四天王はどれも彩色仕上げとなっている。

二躰の十一面観音は高さ179.7cmと167.8cm、柔和な表情で肉厚さがあり、この宝物殿の中で優しくそっと微笑んでいる。

宝物殿の中でひと際異彩を放っているのが、今にも立ち上がろうとする水牛の背に乗った大威徳明王。
騎乗する牛は寄木造で、明王は三面六臂(顔が三つ、腕が六本)の憤怒の相。脚は六本で、水牛の背に乗る左の一番前の脚をあぐらをかくように牛の背中に乗せている。
明王の二手は胸の前で小指と薬指を内側に入れ、絡ませ中指を立てて合掌する檀荼印を結び、他の四手には鉾や宝棒を握る。

騎乗する水牛の筋肉の表現や明王の姿は迫力を出しながらも藤原期特有の落ち着いた雰囲気となっている。


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石馬寺 大方丈


大方丈には本尊である鎌倉時代の十一面観音立像が安置されているが、こちらは現在秘仏となっている。

繖山の麓は古寺が多いことで知られているが、石馬寺はその中でも特に素晴らしく、この地域へ参拝に訪れる際は、是非とも拝観ルートに入れていただきたい。



石馬寺HP:http://www.eonet.ne.jp/~ishibaji/index.html
所在地:滋賀県東近江市五個荘石馬寺町823

電車:JR「能登川」駅より近江バス八日市行き「石馬寺」下車 徒歩15分
   
拝観時間:9:00~16:00
拝観料:境内自由(宝物庫:500円)
休み:月曜日(ただし予約すれば拝観可能)
その他詳細情報は仏像ワンダーランドHPへ>>




石馬寺周辺地図

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参拝日:2011/03/31





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