2011年4月3日日曜日

冷泉寺 独特の広がりをもつ"生える"千手観音【滋賀】

冷泉寺


蒲生の石塔寺、野洲の蓮長寺と湖南方面を巡り、
次に向かったのが千手観音を安置する近江八幡の冷泉寺。

観光寺院とは違うため、拝観の予約が必要である。
石塔寺から蓮長寺へ向かう際、右手に福寿寺というこれまた十一面観音を安置した黄檗宗の寺院があるのだが、冷泉寺はそこから数百メートルしか離れていない。

蓮長寺の十一面観音を拝見した後、昼食をすまし冷泉寺に向かった。
近江八幡の市街地から国道8号線へ向かい「六枚橋」という交差点を過ぎた左手に冷泉寺はある。
この地域では唯一の曹洞宗の寺院だという。


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冷泉寺


山門は古いものであろうが観音様の安置されているお堂は近年立て替えたようで、一見、本堂とは思えないコンクリート造の建物に変わっていた。

この地名である「千僧供(せんぞく)」の由来は、その昔、寛平年間(889~897年)に冷泉寺の前身である「曼荼羅坊」が清和天皇より、病魔に苦しむ人々の国のため、千人の僧侶を集めて病魔退散の起塔供養をしたことに縁を発し、「千僧供養村」と呼ばれ鎮護国家の勅願所となった。

その曼荼羅坊は現在の姿からは想像がつかないが、七堂伽藍を備えた巨刹だったという。

現在は本尊の十一面千手観音しか拝見できないが、他にも博物館などに行ってらっしゃる国の重文の薬師如来坐像、地蔵菩薩立像、四天王像の計7躰がこの曼荼羅坊の尊像だったという。


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冷泉寺 堂内


事前に電話したときにはご住職から当日は不在にしているがお堂は開けておくから庫裏に来てくれればいいと言われていたので、さっそく本堂左の庫裏で名を告げると、奥さんであろうか優しいご婦人がお堂に通してくれた。

お堂の中は畳敷きで20畳ほどの空間、5年ほど前にお堂の建て替えをしたそうで、柱も天蓋も綺麗に掃除が行き届いている。
「どうぞ須弥壇の前まで」ということで間近で写真を撮らせていただいた。


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冷泉寺 千手観音


彫りのはっきりとした平安仏で顔は厳しくも口元をしっかりと結んだ実直さが伝わる表情。
そして何よりも千手の表情が印象的で厨子の中いっぱいに拡がる姿に圧倒される。

湖北の黒田観音寺の伝千手観音にも似た雰囲気で、木の根のように手が力強く空間に拡がる。
高さ107cmとは決して大きくはないが、お厨子の中にいるからか手の広がりが広大な宇宙を想像させる。


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冷泉寺 千手観音


違和感すら感じる独特な千手は、肩や腕から"生えている"といった表現がふさわしいのかも知れない。
病魔退散の為に衆中を救うために日本の手では足りずに幾本もの手を伸ばす観音菩の姿。

悪病からこの地を救うべく、このような特異な姿に変化されたのではないかと思えた。



冷泉寺HP:http://reisenji.ishimago.com/index.php
所在地:滋賀県近江八幡市千僧供町252

電車:JR琵琶湖線「近江八幡」駅下車、バスで10分「長福寺」下車、徒歩約5分
   
拝観時間:不明
拝観料:志納
休み:ナシ
その他詳細情報は仏像ワンダーランドHPへ>>




冷泉寺周辺地図

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参拝日:2011/03/31





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