2011年7月24日日曜日

源昌寺 見返り文殊菩薩を安置する湖北の古刹【滋賀】

湖北 源昌寺


滋賀県の琵琶湖北部に位置する湖北地方は、信仰篤い人々によって守られてきた観音の里である。 この地は1000年以上昔から相当数の堂宇をもつ信仰篤い地で、戦乱や天災を乗り越え無住の寺となった所では、その集落の人々がみほとけを大切に守り続けている。
今でも各村落にはお堂が一つ二つあり、往時の姿は分からないほどに小さくなってしまったお堂には集落の人々が交代制で、お堂の管理をし私のような参拝者が来ればどのお堂も快く開扉してくださる。

今回は、田植えが始まったばかりの初夏の湖北を旅してみた。
向かった先は湖北地方のさらに北部に位置する「余呉」


源昌寺
源昌寺


スキー場もあるこの山里にあるのが曹洞宗の源昌寺。上丹生という集落にひっそりと佇むお寺で、外観は本堂と庫裏が一つになっているので一見するとここがお寺であるかは分からない。屋根の上に寺紋が三つ並んでいるというだけで、民家と言われても遜色ないつくりである。


源昌寺
源昌寺


この地域では殆どのお寺やお堂がそうであるように、観光寺院とは異なり事前に拝観予約が必要となる。
一般的にはその地域の観光協会や役場へ連絡し取り次いでいただくのだが、この日は連絡先を知っていたということもあり直接お寺の方へ拝観のお願いを申し込んでおいた。

家のベルを鳴らすと出てきたのは、自分の母親くらいの歳の坊守さん。おそらくこの家の主でもある住職の奥様であろう。
「ようこそ遠いところおくれやした」と優しい笑顔で玄関を通していただくと、まさに田舎の広い民家そのものといった作りで広い土間の奥には勝手場がある。

その左の畳の間がお堂になっており諸仏はそこで拝見することができるのだが、本堂となるその畳の間に一歩入ると、その仏像の数に思わず圧倒されてしまった。


源昌寺
源昌寺 本尊阿弥陀三尊など


明治の頃までは洞寿院の末寺として、源昌寺の前身である源昌庵の他に清福庵、永伝庵、自在庵があり、さらには全秀庵 、誾徹庵 、祖心庵 、成就庵などの名前も記録にあるという。しかし時代を経てこれら小寺は経営難から次々と廃寺となり、最後はこの源昌庵(現在の源昌寺)に統合されたのだという。


源昌寺の本尊は須弥壇上に安置された江戸時代の釈迦三尊であるが、先のような状況から他宗派である真言宗の中林寺の仏像も預かっておられる。
特に珍しいのはその本尊の下段に安置された文殊菩薩で、獅子に乗った見返りの文殊様である。この構図は非常に珍しく、京都の永観堂で有名な見返りの阿弥陀様のように少しだけ顔を左へ向けた姿をしている。


源昌寺
源昌寺 見返り文殊菩薩


他にも仏像は多く、高さ10センチほどであろう小さい像ではあるが艶のある表情が印象的な如意輪観音坐像もお厨子の扉を開けて拝見させていただいた。


源昌寺
源昌寺 如意輪観音


この源昌寺には、伊香西国28番札所本尊である中林寺の本尊聖観音菩薩さまが安置されている。宗派の異なる中林寺の本尊のために数年前に改築したそうで、坊守のお母さんは「こんなところでも窮屈でないだろうかね」と心配されていたが、その空間を見る限り中林寺の本尊だけでなく全ての仏像を大切に扱われていた。

その新しく改築された本尊は秘仏のため前には御前立が安置されている。


源昌寺
中林寺御前立聖観音(源昌寺)


江戸初期であろうかふっくらとした優しいお顔をしている。本尊と御前立はどちらも寄木造りで彩色の後が所々に残っている。
掲げられている写真を見る限りでは本尊のほうが引き締まった表情をしていて、御前立のような柔らかい雰囲気はない。しかし、その作りや造形が全く同じなのでこの二躰は同時代に同仏師が彫られたものであろうということだ。


源昌寺
中林寺御前立聖観音(源昌寺)


そして湖北でのもうひとつの出会いは、みほとけを守る人との出会い。 みほとけを守り、みほとけに守られ暮らしている人たちとの出会いが旅の思い出を一層深いものにする。

この日も一番の安らぎは、この坊守のお母さんの笑顔だった。



源昌寺
源昌寺






源昌寺HP:ナシ
所在地:滋賀県長浜市余呉町上丹生2247

JR北陸本線「余呉」駅下車、バスで約25分
   
拝観時間:要予約確認
拝観料:志納
その他詳細情報は仏像ワンダーランドHPへ>>




源昌寺周辺地図

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参拝日:2011/06/08





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